“なんか変だな”と最初に思ったのは、ライブが終わったあと、倉庫代わりにしているアパートに音響機材を運んでいるときだった。
汗にまみれ、あまりの重さにへとへとになりながら、機材一式を2階に運んだ。その時、皮膚に妙なものが付いたような、妙にイヤな感覚をおぼえた。
その後、焼き肉屋「いちなん」の屋上で、バーベキュー・パーティ兼、ゲーム大会があった。そこでまあ、ホストとして、みなさんが楽しく遊べるように動き回っていて、その時は、何も感じなかった。
寝る前や翌朝から、突然、身体の一部が痒くなり始めた。「?」と思ったが、それでも東京の念仏会のために、新幹線に乗って出かけた。
午後になり、かゆみは増す一方だった。そして、夕方からは全身的に痒くなり始めた。
果たして、夜にはどうなったか? あまりのかゆみに、マジでうなるほどになっていた。そしてつらく苦しく、とうとう朝まで一睡もできなかった。ついに僕は、そこで白旗を掲げた。京都に帰ったのである。
治療師のはしくれとしては、実にお恥ずかしい限りだが、この突然の蕁麻疹の発症で、僕は3日間完全にダウンした。途中、あまりのかゆみにのたうち回り、うめき、そしてちょっと本気で泣いた。
<いやー、つらかったス>
ムヒなど全く効かないほどの激しいかゆみ。念仏修行中みたいに身体感覚を消失させると、苦しみは茫漠として来る。だけど僕は、むしろ症状を感じて引き受ける方を選んだ。
なぜか、まゆさんに温泉化粧水でぴちゃぴちゃ身体を叩いてもらうと、1、2時間は耐えられるぐらいに収まった。そこで症状が激しくなるたびに、うぅーと、うなりながら階下に降りて、そして、うぅー!とうめきながら、日に何度も温泉水でぴちゃぴちゃ叩いてもらった。
これには本当に助けられた。そしてアトピーに苦しむ人の気持が、少しだけわかる気がした。
食べ物が原因ではない。僕は高校の時にもなったことがあるのでわかる。最初は、一度目の私立高校の時。学校に行くストレスが原因だった。次は、二度目に入った都立高校の時で、これはクスリの過剰摂取によるものであった(タハハ。このときは、眼が開けられないほどひどくなった)
今回の原因もまた、はっきりしている。心身の過度の酷使である。実は、4日後にやっと症状が引いてからも、ついまた長時間に亘っての原稿書きなどで無理をした。そうしたら、またぶり返しそうになり、慌てて自分に誓った。これからは1日3時間以上の原稿書きなどの作業は止めにしよう、と。
まるで、孫悟空がイタズラをした途端、頭の輪が締め付けられるようなものである。ああ、くわばら、くわばら。