今年の中東アースキャラバンで、どうしても自分が成し遂げたかったことがある。
それは、イスラエル占領下にあるパレスチナ人たちの苦しみを直接見聞するプログラムを組みたかったことだ。
<難民キャンプの入り口>
現地にいない状態で、そのプログラムをどうやって組んだら良いのか? 最初は、皆目、見当もつかなかった。
まずは去年世話になった東エルサレムにあるキリスト教系の人権団体の人間に連絡した。
メールでもやり取りしたし、スカイプ(パソコンの無料電話)でも随分やり取りした。
でも、何ヶ月かのやり取りの末、いろんな事情から、最終的にその線はなくなった。
<ヘブロンには、イスラエルがいたるところに建てた壁が、人々の生活を困難にしている>
そこで僕は、去年、エルサレムにいるときに、「広島の芝居をヘブロンでやるから見に来て下さい」と僕を招いてくれた、YES 劇場のスタッフ、スライマに連絡した。
僕はスライマーに自分の考えを伝えた。
「アースキャラバンで来る人たちに、占領下の実態をぜひ体験してもらいたい。そのコーディネートをぜひお願いしたい。」、と。
お金で頼んだのではない。ボランティアを頼んだのである。
嬉しいことに、スライマは快諾してくれた。率先して、いろんな団体と連絡を取り、いくつかの施設などを巡るスケジュールを作ってくれた。
もちろん、一回のやり取りではない。何度も何度もいろいろなことを打ち合わせた。
そして、僕やローレンスがグループ電話を切るとき「ありがとう」と言うと、「それは言わないで」といつも言っていた。
子供たちが刑務所に入れられている
占領下にある人々の苦しみの体験を語ってもらうのは、そう簡単なことではない。
そして、実際に現地に行って僕たちが聞いたのは、例えば、あるパレスチナ人のおばさんの話である。
彼女は、ある日、理由なく逮捕され、それから6年間投獄された。
棒で殴られた。どんな拷問だったのかは語りたくない、と言った。
人間扱いされない日々が延々と続いた。いつ終わるのかもわからなかった。身体の痛みよりも、人間としての誇りが奪われたのが一番辛かった、と話していた。
また、別のところでは、お母さんたちの話を聞いた。
10ー15歳の子供たちが、石を投げた、という理由で(たとえ何もしていなくても)逮捕され、何年も勾留されていた。
(その数は、現在、数百人にも及んでいる)帰って来た子供達は、口も聞けないほどの状態になっていたりする、という。
<子供が勾留されているお母さん>
もちろんこんな話や映像は、どこのメデイアでも放送しない。
YES 劇場は、そういう家族のトラウマを癒すために、演劇セラピーを施している。
スライマがベツレヘム大学の学生だというのは、後で知った。
国境なき医師団の報告
↓
http://www.msf.or.jp/news/detail/voice_2396.html