ある日、僕は怪物になった。うぅ……(閲覧注意)

『変身』という小説がある。カフカの作品である。

 

ご存知の方も多いと思うが、どんな小説かというと、

「ある朝、目覚めたら自分が巨大な芋虫のような怪物になっていた」

という話である。

 

僕がこれを読んだのは、16歳(高校一年生)の時で、

死ぬほど苦しいときだった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、夢を見た。

 

ある朝、目覚めたら自分が怪物になっていたのだ。

 

鏡を見て、うわぁーーと叫んだ。

 

僕は混乱し、訳がわからないまま、

母親に連れられて、山に行くことになった。

 

それは、世間から隔離されるためであり、

”自分は山の中で、死ぬまでオリの中で過ごすんだな…..”だと認識した。

 

この時は夢であった。

 

しかし何と実は、今現に、リアルなドタバタ喜劇で

自分の人生に起こっているのだ。

 

……..というのが今日の物語である。

 

 

ところで、身近な人はご存知だが、僕は完全なズボラ人間である。

 

日本の学校に通っていた小学生の頃の写真は、

全てズボンからシャツがはみ出ており、

「だらしなさ」では、常にクラス・ナンバーワンを誇っていた。

 

何せ、僕は洗顔の習慣すら、

『幼稚園の頃から今に至るまで』なかったのだ。

 

ただ、これはちょっと、家庭であった、トラウマが原因なのだが、

元からズボラな性格のため、今になっても洗顔しなかった。

(なので自分の責任ね)

 

加えて言うと、僕は極端から極端に走る人間である。

 

例えば、

偏差値70の高校受験のために、

9か月ぐらいは必死に勉強して合格し、

その1年後には高校中退する。

 

ロックのギターを必死に練習して、

場末のバンドマンで多少の給料もらうぐらいはできていた。

 

それが、「生きた音が出なくなった」という理由で、

あっさりバイオリンに転向したりもした。

(2年間、ギターには触りもしなかった)

 

 

 

 

僕の極端から極端に走る例を挙げたらキリがない。

(そしてまた元に戻るなども)

 

実は、それが今回の話の前提で、

ここから、僕のコンフェション(自白)がはじまるのである。

 

 

インドからの帰国便でバンコクに寄った。

 

少しは自分にもご褒美を、と思ったのである。

 

 

そして僕は、ある日、”僕もミュージシャンの端くれなら、

ステージでの見てくれに、もうちょっと努力を払うべきだ。

 

マイケル・ジャクソンを見ろ。整形を重ねてまでして、

最高のステージを見せるために努力していたじゃないか。”

 

と思ったのだ。

 

かねてから僕は、

”どんなに醜く老いさばらえても、青春を生きて抜いてやるぜ!”

なんて一人息巻いていた。

 

(同時に、”ジミヘンみたいに、ステージで最高の演奏てから死にたい”

なんていうのは、ティーンエイジャーの頃からの夢だったけど)

 

しかしその日は、洗顔もしない超ズボラ人間が、

マイケルジャクソンを見習って見てくれをよくしよう!

なんて思ったのである。

 

もっとも、整形するまでの勇気はさすがにない…….

 

 

そこでズボラ人間の末路である顔のしみを綺麗にするための

レザー治療に行こう! と一大決心をしたのである。

 

正直、心底、ドキドキした。

それに、今まで考えてみたこともなかった、

そんなことするなんて、超恥ずかしい。

 

(僕はショッピングをする、ということ自体に

恥ずかしさを感じる、普通の人から考えたら全く不可解な人間で、

そのため自分で服を買うことはほとんどない)

 

なので最初は、勇気がなくて、ネットであたりを付けておいたところに、

「場所確認ね」という名目で偵察に行った。

 

さんざんウロウロした挙句、意を決して、翌日の予約をしに行こうとしたが、

勇気がなくて入れない。

 

結局、電話番号を調べ、すぐ近くにいるのに電話するという、

マヌケなことをやる始末である。(← オレ、何やっているんだぁ~)

 

だって超恥ずかしいんだもん。

 

冷静を装って電話したら、”予約なしで良いからいつでも来て”と。

なかなかフレンドリーなお姉さんであった。

 

そして翌日、勇気を奮い起こし、出かけて行ったのだ。

 

僕としては、自分が苦手なことを克服しに行く気分で、

実際に行く頃には、気持ちはかなり開き直っており、

”この志のどこが悪いんじゃい!”と自分の中の世間に向かって、

無意味にちょっとそんな気分だった。

 

それに、”レザー光線なんだから、顔にちょっと光当てるだけでしょ。

それで顔がスッキリするなら良いじゃん”

ぐらいの超安易な気持ちにまで至っていた。

(ここまで開き直るのは 、大変だったけど……)

 

それで上の写真は、僕が怪物化する前の準備の段階である。

 

(レザー治療を受ける前のクリームを塗られた後で、

40分そのままでと言われた)

 

そして45分後、個室に招き入れられ、レザー治療が始まった。

何と、これが痛かったのだ。20分前後も……

 

僕の安易な考えは見事に打ち砕かれた。

 

そして、終わった後、鏡を見て腰を抜かした。

 

そこには、顔中が赤く腫れ上がった怪物がいたのである。

 

ぎょえ〜!

 

とっさに16歳の時に見た夢を思い出したぐらいである。

 

アシスタントの人が氷の風船みたいなものを持って来てくれたが、

僕はショックと痛みでフラフラである。

 

その後、予後のためのクリームを何種類もたくさん渡された。

 

洗顔後に朝晩、どの順番で塗るかなどが書いてある。

 

洗顔!!!!

そして顔にクリーム!!!!

 

怪物になった僕は、こうして、人並みの習慣を付けることになった。

 

クリニックを出て、僕は最初にしたことは何か?

何と、マスクを付けることである。

 

マスクだとう!!!!

 

…….顔を隠すためである。

 

そして帽子も買った。

 

1か月は紫外線に当ててはいけない、ということで

日除け傘まで買う始末である。

 

しかし何せ顔が……

(素顔のまま電車に乗ったら、ギョッとされてしまった)

 

おかげでバンコクではホテルに自主隔離する始末で、

朝ごはんを食べに下に降りるけど、マスクと帽子はかぶったままである。

(まるでコロナ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<マスクと帽子でも隠し切れない赤いブツブツ

(顔中こうだと、爬虫類人間ぽくて不気味だ)>

 

もしかしたら、このままで顔が固定してしまうかも知れない。

 

そんな可能性だって否定できない。

 

それでもなぜか、心のどこかで喜んでいるのは、

超恥ずかしくて、自分には絶対できないことをやった、

という自分の可能性に挑戦したからだ。

 

”顔がこのままだったら、ずっと隔離してりゃ良いや。

人に気を使うこともないしね”なんて思ったりした。

 

それに、これからは、

”僕はどうせ顔が怪物みたいに腫れ上がっていますから”

って言い訳で、頑張らなくても良いしね”なんてことも思って、

ちょっとだけニンマリしている自分までいた。

(←おいおい、マイケル・ジャクソン的な意気込はどこに行ったんだぁ!?)

 

まゆさんに電話して、”フェイシャル・トリートメントに行ったら、

顔がすっかり怪物みたい腫れ上がって不気味だけど、見てみる?”と聞いた。

 

僕は相手が好奇心まる出しで、”見る、見る!”っていうと思ったら、

”そんな気持ち悪いの見たくないわよ”と却下されてしまった。(大笑)

(自分なら絶対見るけどなぁ……)

 

まあいいや、数日経って、顔はあまり変わっていないが、

こんな自分の顔でも、何だかちょっと見慣れて来た。

 

果たして、この先どうなるのか?

 

僕はどう対処していくのか?

 

実に興味シンシンな展開になって来た。

 

それにしても、レザー治療に行くのは、

パレスチナのデモで、イスラエル兵たちが催涙弾撃ってくる中を、

最前例にまで進んで行ったときより、勇気行ったなぁ。

 

それにしても……と思う。

 

恥ずかしさを乗り越えて

勇気を振り絞って行ったことにすっかり満足して、

”あとは野となれ山となれ”って思っている自分って、

一体、何なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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