ニューヨークの豪邸で始まった僕と原爆との出会い

冬の話ばかり書いてしまったけど、ニューヨークにはもちろん夏だってある。どのような経緯でそのようなったのかはわからないが、プールのある豪邸に1人で何日間か泊まりに行ったことがあった。それは、奥さんが日本人でご主人がアメリカ人というご夫婦の家だった。泊まりに行った日に、”明日は日本から別のお客が来るから”と言われた。

翌日の夕食時、日本からのお客という人を紹介された。そして、その人が席を辞した後、奥さんが僕に言った。”びっくりしたでしょ。彼女は、ね。広島で原爆にあったのよ。家族はみんな亡くなってね。それで、あるアメリカ人がお金を出して、彼女のケロイドを取る手術をアメリカで受けさせているの。今度で3度目なんだけど、前はもっとヒドかったのよ。あれでもずいぶんよくなったの”

僕は子供だったし、その人とは、2日もしたら親しく話すようになった。顔や首に腕などにあるケロイド状になった爛れたあとは気にならなかったか、あるいはすぐに慣れたのかも知れない。背中や脚はヒドイらしいが見えなかった。ご本人がプールに入らなかったことを不思議に思った僕は、やはり子供だったのだろう。

ただ、その話を奥さんから聞いたとき、妙にボンヤリとした想いになった。それは、今まで話で聞いていただけの「原爆」が、突然目の前の現実になったからではないか、と思う。

ただ、たしかにそれは、僕と原爆との出会いだった、、、。

 

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