ウィーン指圧国際会議って?

ウィーンに行ったのは、4日間に指圧国際会議での講師を勤めることと、その後の3日間の「念仏&タオ指圧ワークショップ」をするためである

仏教タイムスの板倉さんに”ウィーンに何しに行くんですか?”と聞かれたので、そう答えたら、”指圧国際会議というのがあるんですか?”とちょっと驚いたような返事だった。

イタリアなんて毎年のように2、300人参加の自国の会議をやっているけど、ヨーロッパの国際会議は何年かに一度、やっているようだ。それで今まで、オーストラリアやドイツなどの国際会議でワークショップして来た。

でもまあ何というか、僕は、あのような場で”良い子”を演じているのが、実は大変苦手である。(それであまり積極的には行かない)

だって、さも「私、経絡わかっていますよ」みたいな顔している人たちが集まっているんだもん。つい、何か言ってやりたくなっちゃうだよねー。”王様は裸だ!”って、声に出して言うのを我慢しているのが、いささか辛い、、、。(正直、死ぬほどつらい)

ワークショップは分科会みたいで、参加者は、自分の好きな講師のに出席する、という感じである。(きっと人気に差異が出るんだろうなー)まあイイや。今回は、参加者は25か国から500人が集まったそうで、講師の数も25人とやたら多かった。

講師のウエルカム・ミーティングに出かけて行ったら、オーストラリアの国際会議で会ったイギリスのビル・パーマーや、イタリアの国際会議であったクリフォードとかがいた。

ベルリンの国際会議で会ったカナダ在住の斎藤さんも来ることになっていた。斎藤さんはいい人なんで僕は好きなのだが、体調を崩してキャンセルしたそうだ。会えずに残念だったな。

僕のお役目は、4日間の内、3時間のワークショップが2回と、1時間の治療デモンストレーションが2回である。

<ワークショップ>

1日目、3時間ほど前からワークショップ内容を悶々と考えたあげくに諦めた。どうせ、予定通りにはいかないのだ。

まるで試合に臨むボクサーのような、何とも言えない悲壮な気分で、僕はワークショップに出かけていった。”こんな役割できれば勘弁して欲しいなあ、、、”などというボヤきを必死に飲み込みながらである。

覚悟を決めないと、あんな場には出れない。(海外の「私、指圧のマスターざます」っていう感じの人がたくさんいる会場に行くんですよ、あなた、、、。できたら、誰かに代わって欲しい、とは思うがそうもいかない)

以下はFacebookに投稿した、指圧国際会議でのワークショップの様子である。

『広いとは言えない会場で、参加者98人相手の3時間ワークショップ。しかも、タオ指圧が初めてという人たちが相手(汗)。だから冒頭の僕の話は、「正直な話をして良いですか? (Yes!という声が会場から上がる)

実は皆さんが知っている経絡は、地図に過ぎないんですよ。地図をどれほど知っていたって、悪いけど何の意味もないんです。現実じゃないんだから。あっ、こうこと言うと嫌われるんで、あまり正直に言いたくないんだど、、、」、と。指圧の学校の先生や治療師たちが相手だと、こんなやり取りになる。

結局、“別にウソ言ってるわけじゃないよ”って、納得してもらうために「症状のある人はいないですか?」と呼びかける。そして、”膝が痛い”とか、”肩が痛くて腕が上がらない”などの人たちの症状を、次々にその場で取っていく。

みんなにシリアスになって欲しくないんで適当に笑わせながらですけど。ぶっ通しで3時間、ほとんどの人が最後までいたから、皆んなエラかったな。』

今までタオ指圧に触れたことのない人たち相手に、(例え僕の拙著を読んでいたとしても)経絡の話をしては反発を招いて来た。(←これが怖い)

何せ、タオ指圧が指導する経絡は、いずれも古典などでは、一切説かれていない副経絡(合計24経絡)、邪気から身を守る超脈、脳に影響を及ぼす気心脈など、膨大な経絡群なのだ。

そんなもの初めて聞く人は、今は頭が白くなるだけで済むが、以前ならばかなり反発されたり疑われたりしていたのだ。それで、その場で効果を見せて納得してもらう他はなかった。治療デモンストレーションを行って来た(行っている)のはこのためだ。

そして今回のワークショップでは、タオ指圧初心者の98人を相手に、まったく新しい世界を体験してもらわなくてはならなかったのである。

それはまさに、気が遠くなるような作業だった。いくら暑くても水も飲めない(指圧したあとは水で邪気を洗い流す必要があるため)。また休んだが最後、全員に集中力を取り戻させるのは並大抵のエネルギーではできないので、結局、3時間ぶっ通しで行った。

<治療デモンストレーション>

<ステージ上での治療デモンストレーション>

2日目、デモンストレーションには、比較的気楽に会場に出かけて行ったが、そこは体育館のような広い場所だった。ステージがあり、参加者(見学者?)は、昨日にも増して多く満員だった。

最初、”1時間の治療デモンストレーション”と聞いて、一体何人を治療することになるのだろうか? と思った。それで最初はちょっとひるんで、”えっ、1時間もやるの?”と聞いてしまった。

もっとも、通常の講師の場合は、一人を被験者相手に何か講義しながら指圧して終えるから、そのような時間設定になっている、とのことだった。

しかしタオ指圧は、実証主義である。効果のない治療は意味がないと信じている。(患者側にしてみたら当然そうだ)なので、「誰か痛みなどの症状のある人はいませんか?」と会場に呼びかけて施術する。(これは、経絡指圧の創始者、増永静人先生伝来のやり方である)

会場から現れる人は、”もう30年来の痛み”だとか、”触れるだけでも痛い”、などの人たちである。それを10分程度の施術で結果を示さなくてはならない。

治らなかったらどうしよう? などと考えたら、こんなことはとてもできない。ただ心を透明にして、必死に受け手の気の状態を診て、無心に施術するだけだ。

ワークショップと違い、治療デモンストレーションでは、参加者に体験させる必要がないので、その分は気が楽である。ワークショップで参加者が反発していたり我を出したりしていると、会場の気が汚れて参加者は気を感じることができない。

それで、会場がそうならないように、気を抑えたりなどのコントロールが必要になって来る。それが結構、大変なのである。一人で会場全体のネガティブな気をコントロールするのは並大抵ではない。

もちろんデモンストレーションだって、”その場で治らなかったらどうするんだよ!?”というストレスはある。しかし前述したように、そんなことを考えていたら、こんな綱渡りのようなデモンストレーションなど、まずできない。精神的に潰れてしまう。なので、それは考えない。結果を考えず、ただ無心に、受け手のために切実に誠実に施術するだけだ。

さて、最初に壇上に現れたのは、2、3年膝と肩が痛く、頭から目にかけて時おり痛む、という男性だった。経絡を診たら「膀胱虚」という診断。

対人関係にストレスがあると、膀胱虚になり易い。また最近では(というのは、経絡にも流行があるからだ)、膝の痛みとして出ることが多い。頭から目にかけての痛みは膀胱のスジに沿っている。僕の指摘は、本人的には、どんぴしゃりだったようだ

そんな風に、ステージで経絡について、いろいろと説明しながら治療を進めた。数分後、膝の痛みや肩、頸部の痛みが取れて、施術は終了した。

次に現れたのは、”足甲部に触れるだけで痛いところがあって眠れず、15年間苦しんで来た”という女性だった。診ると「胆虚」。甘いものをたくさん食べただろうな〜。聞くとやはりそうだった。

ところで西洋の国際会議の会場には、いささか性格のよろしくない人が必ず何人かはいる。例えば、”触れるだけで痛い”という人の足の甲に僕が触れて、本人が痛がったりすると、さも嬉しそうにゲラゲラ笑うのである。(これがまた、静かな会場にうるさく響き、イヤな感じである)

15年も眠れないほど痛かったのだ。しかも触れるだけで痛いのだ。どこをどうしたら良いのかはこちらだって、最初の数分は手探りの状態である。その手探りの中で必死にやっている中で、患者の反応が思わしくないと、何度も笑い声をあげる。

いかにも”こんなの治せるはずないよ。恥かきゃ良いんだよ”と言わんばかりである。僕がその場で効果を見せてしまうと、沽券にかかわるのだろうねぇ。

”苦しんで来た患者さんがここにいるんだから、「何とか治って欲しい」と願うのが人の道つうもんだろうがあ!”と言いたくなるが、笑い声などに構っている余裕などない。

ただ、善意でない笑い声が耳のはじに聞こえ、その善意でないエネルギーを感じる一瞬、さすがに”こんな状態の患者さんに、果たして効果は出るのだろうか?”と疑念がよぎりかける。

しかし僕は、そこを必死に踏みとどまる。そして逆に会場の皆さんに言う。”邪気さえ抜ければ、すべての症状は取れます”、と。(これではまるで、「ベーブルースのホームラン宣言」みたいである←古い!)、、、僕はますます追い込まれていく。

※アメリカの伝説的野球選手のベーブルースは、打つ前にバットをスタンドに向けて”ホームラン宣言”をして、実際にホームランを打った。

再び無心に、心を透明にする。そして、ただひたすら使命を全うすることに努める。やがて、痛みが取れて来る。施術が無意識に浸透し、トラウマが癒されて来た患者さんは、今や泣き声を上げている。

いつしか笑い声もやみ、もはやシーンと静まりかえった会場に、患者さんの嗚咽だけが聞こえている。そうしてさらに10分も経っただろうか、、、。

そこには長年の痛みが取れた患者さんがいた。彼女は涙を流しながらニッコリと笑い、サンキューと合掌してステージを降りて行った。

会場の人々が納得すれば、後の流れはスムーズになる。3人目として現れたのは、30年間、肩の痛みを抱えて来た女性だった。同じように、経絡やツボを診る。そられについて説明しながら、透明に無心にひたむきに治療に専念する。

やがて症状の原因である邪気が抜ける。そして、ついに30年来の痛みが取れた! 僕には、その一瞬がわかった。そこで彼女にマイクを渡し、今の治療の過程でどう痛みが取れて行ったのかを、会場の人々に自身の口で説明してもらった。

そして、彼女に”今までの30年にさよならと伝えてください”(これから新しい人生を歩んでください)と告げたところで時間となった。こうして、僕の役目は終わった。

<後記>残念ながら、この日の映像は撮れていなかった。 ><;) こんな圧巻の治療デモンストレーションも、なかなかないんだけどなぁ。

参加した人で撮影していた人がいたら、映像をもらいたいけど、探すなんてそんなのかっこ悪くてできないよ。(”どうしてか?”って?。 ”僕の治療デモンストレーションは、いつもこんな感じ、これが普通なんですよ”って顔したいじゃないですか)

えーん(泣き声)

 

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