胸が張り裂けそうになった。僕は涙を流さずに泣いた

もう寝ようと思ってパソコンを閉じかけて鳴ったスカイプ電話を、僕は無視できなかった。ガザの医者アハメッドからだったからだ。   ガザの状況を聞いていたら、胸が張り裂けそうになった。僕は涙を流さずに泣いた。

ご存知の方も多いと思うが、ガザは東京23区より少し大きな所に200万人が閉じ込められている。イスラエル占領軍によって人の出入りはもちろん、資材の搬入も極端に制限されている。そして頻発に起きる停電、、、。

一番の問題は、水である。イスラエルが深い井戸を掘らせないため、ガザの水は塩分を多く含んでおり、安全な水が飲めない。

水には尿素も含まれており、腎臓病も多く、また子供達の健康が懸念されている、、、。ガザは、あと数年で人間が生存できなくなるほどひどい状況なのである。

だから、そこに脱塩の浄水器を取り付けようというのが、ミッションである。

ガザの入域方法については、最初、以前東エルサレムで会った、映画監督の古井みずえさんに聞いたり、昨年、社民党から立候補した増山麗奈さんに電話したりして聞いたりしていた。(1昨年、パレスチナで行動を共にしたことがあった)

どちらも親切に教えてくれたが、どうやら、自分がジャーナリストを名乗るという名目を、どこかの雑誌か何かが請け負ってくれたらなんとかなるらしい。(簡単に言えば)

イスラエル当局から確認の電話がかかって来たら、「はい。この人に記事を書くのを依頼しました」と返事をしてもらえば良いのだ。

増山さんは親切に、そういう雑誌社のOKとってくれた。何ならプレスの腕章も用意してくれる、とのこと。とてもありがたい。(増山さん、お申し出、どうもありがとうございました!)

そうこうする内に、タオサンガ・イスラエルのマガリから、ガザ入域の許可申請を無料で代行してくれるリチャードという弁護士と繋がった、とメールが来た。

マガリは簡単にガザ入域が可能になると思っているようだし、僕はふふふと小躍りするような気分だった。

それで3月、夏のアースキャラバン中東の準備にパレスチナに行った際、リチャード弁護士に会ってミーティングした。

彼が言うには、「申請はいくらでも出すけど、許可が降りるか降りないかは、まったくわからない。降りることもあれば降りないこともある」とのことだった。

そこで僕は、「それならジャーナリストの名目を日本でもらうから、その線でやった方がカタイんじゃないですか?」と言った。

しかしそのアイディアは、全員にいともあっさり却下されてしまった。マガリには、”Ryokyuさん、軍は全部チェックするんですよ。Ryokyu Endoで検索したら、タオ指圧とかそう言うのばかり出て来るでしょ。一発でダメですよ”、と。

まあ、そんなら仕方がない。

その後、マガリーは僕のガザ入域の方法について、情報取得に随分、動き回ってくれた。

結果、まず協力してくれそうなイスラエルの団体にメールを出した。2つほど出したが、ムリです、とか、一応、申請してはみますが、などまた反応はいろいろ、、、。誰か確実なセンを請け負ってくれい! と僕は天を仰いだ。

うーん、、、。出発まで一ヶ月を切った。だんだん焦って来た僕は、国連の人にも連絡したが、ガザへの招待状はもらえず、その線は敗退した、、、。やはり中東の人間でないとなあ、、、。

“それならば、、、”と、以前、イスラエル大使館に勤めていたニルに連絡し、誰か紹介してくれぇー、と頼んだ。その結果、東京のイスラエル大使館勤務・文化担当のアリエを紹介してもらい、それから僕の必死のやり取りが始まった。

アリエはなかなか親切だった。

そしてその結果、イスラエル大使館から申請を出してもらうことになり、もう僕は大船に乗った気になった。何せリチャード弁護士からも、イスラエルの平和団体からも、イスラエル大使館からも、僕のガザ入域申請書が行っているのだ。まるで有名人である。

、、、がしかし、人生そう簡単に物事は運ばない。

いつまでたっても返事がないので、業を煮やしたマガリがイスラエル軍に連絡を取ったところ、どこかで止まっていて、まだ担当デスクに上がって来ていない、とのこと。ああ無情!

要するに、軍と言っても所詮、お役所仕事なのである。しかもウワサではガザ担当の部隊は、一番できの悪い兵隊が行くところだとのこと、、、。

それでも僕は諦めなかった。最後の1分までも努力し続け、そのままとうとう飛行機に乗った。

各地と必死のやり取りをしている最中、僕はちょっとした夢を見た。ガザに入ったけれど、閉鎖される時間までに検問所にたどり着けず、オーバーステイしてしまう、という夢である。

なに、その時はそのときだし、僕はガザに入るというミッションしか頭になかった。

それに、これはよくあることなんだけど、日本を発つまでにピースサイクルやら何やらで、すでに各地を忙しく巡っていた。さらに30人が参加するアースキャラバン中東の段取りもあり、ガザもあり、頭も身体もオーバーヒートしていた。

僕は、出国で何とか頭をリセットするつもりだったのだが、その直前、大きく誤算があったことに気づいた、、、。

<続く>

 

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