ガザ在住のアハメッド医師から、皆さんに向けて手紙が届きました。お読み頂けたら嬉しく思います。
水の危機、死にかけているガザ
医師・ガザ在住 /アハメッド・タワヒナ
1)200万人のガザ市民は生存できるのか?
50年に及ぶイスラエルによるパレスチナの占領、、、。このため、ガザ地区がたった一杯の安全な飲み水の枯渇から逃れられたのは、ほんの数ヶ月に過ぎませんでした。
イスラエル軍による一般パレスチナ市民への暴力は、エスカレートする一方です。ガザには安全な飲み水がなくなっています。腎臓病が多く報告されていますし、いつ疫病が大流行してもおかしくありません。
実はガザの水危機は、自然災害ではありません。技術的な問題でもありません。イスラエル占領軍がパレスチナに深い井戸を掘らせないという、政治的な力による人災なのです。
ガザの問題は、政治的な詭弁によって、あたかもイスラエル-パレスチナの紛争が原因であるかのように見せかけられています。人々は、イスラエル軍による、丸腰の市民への武力攻撃や頻繁な暴力だけに目を向けがちです。
しかしこれによって、人間が生存を維持するために必要な問題が隠れてしまうことがあるのです。水と電気は、ガザ市民全員の生存に直結しています。
これは、軍事的占領において行われる日常的な銃の射撃、また一般民家に対して定期的に落とされる爆弾よりも、人々にとって深刻な脅威となるのです。
2)いつか爆発して死ぬ「時限爆弾」のようなもの、、、
市民は、地球上で最も人口過密なガザ地区に、まるで牢獄のように閉じ込められています。迫り来る水と電力の不足は、ガザ市民にとって、いつか爆発して死ぬ「時限爆弾」のようなものです。
道路、住宅地、家屋、農地を、未処理の下水が氾濫しています。ガザ市民の病気の蔓延という恐れが、現実のものとなりつつあります。
イスラエルは高さ8メートルの壁でガザを取り囲み、誰も自由に出入りできない牢獄にしています。しかし汚水や病原菌は、その壁すら越えて、イスラエルにまで及んでいくことになるかも知れません。
3)貧困家庭は、収入の3分の1が飲料水の購入費に!
ガザの水危機は、ここ10年以上、悪化の一途を辿って来ました。現在、パレスチナ自治体の水道は、電力不足により頻繁に断水するだけでなく、塩分が多すぎて、とても飲めたものではありません。(ガザ市民はこの水を“塩水”と呼んでいます)
地下水も塩分濃度が高いので、多くの農家は、伝統的な作物である、イチゴ、キュウリ、トマトなどを諦めて、耐塩性の作物を作らなければなりません。
現在、水は公衆衛生上、あり得ない高レベルの硝酸塩と、味のないに汚染物質を含んでいます。このため自治体が供給する飲料水は、家事や身体を洗うことにのみ使われています。しかしそれでも、しばしば皮膚疾患や他の伝染病を引き起こします。
ガザ市民はやむなく、脱塩プラントから水を運ぶ民間業者から飲み水を入手しています。しかし貧困家庭だと、飲み水に収入の3分の1を水の購入費に当てなければならないのです。
4)ガザの全ての子どもたちが、腸管寄生虫に感染している!?
汚染された水は腎機能障害、心不全、神経学的症状、嗜眠および高血圧を引き起こします。またガザの水に含まれている過剰なフッ化合物は有毒で、様々な疾病が市民を襲います。
それらは胃炎、潰瘍、腎不全、骨フッ素症(骨折や麻痺を引き起こす)、歯のフッ素症(歯茎に黒い線が現れたり、虫歯の原因)などです。
一方、WHOによれば、ガザにおけるあらゆる疾患の26%、ガザの子どもたちが被る、水関連の寄生虫感染症の50%の要因が、汚染水を飲むことが原因だ、ということです。
ガザの全ての子どもたちが、腸管寄生虫に感染しています。寄生虫の感染と慢性の下痢は、子どもの発達と成長にも影響を及ぼします。子どもたちは、深刻な健康被害を被っています。
硝酸塩が多く含まれる飲み水は、特に乳児にとても危険です。ヘモグロビンの酸素との結合が妨げられ、血流障害を起こすからです。乳児がブルーベイビー症候群に罹患すると、呼吸障害、下痢、嘔吐などを示し、極端な場合は死に至るのです。
5)脱塩浄化装置の設置を!
ガザに在住する、アハメッド・タウラと申します。私はクリニックを営む医師であり、イスラエル軍の爆撃によって心身に傷を負った子供たちや学生に、トラウマの癒しを行う合宿を定期的に行って来ました。
アースキャラバンのメンバーであるマガリやローレンスを通じて、私の活動にご寄付を頂き、また遠藤喨及さんとも繋がることができました。この8月、遠藤喨及さんと磨祐さんをガザにお招きし、ワークショップと心身にトラウマを負った人々の治療をお願いしようと思っていました。
しかしその申請はイスラエル軍によって却下され、私の願いが叶うことはありませんでした。喨及さんはそれでも、脱塩処理できる浄水装置を私のセンターに設置できるようにしよう、と言ってくださいました。
その装置は約12000ドル以上(約130万円以上)もします。しかし遠藤喨及さんは、何とかお金を集めるから、と約してくれました。そして、再び3月のガザ入域を目指してくれています。それまでに脱塩浄水装置の設置をと、考えていらっしゃるとのことです。
装置が設置されたら、近隣の約1000人もの人々が、塩分の入っていない水が飲めるようになります。装置には、もちろんメンテナンスの必要があります。そこで私は、この装置を利用する人々から、わずかずつでもお金を頂き、それをメンテナンスの費用などに当てたいと、考えています。
私は今後も、子供たちや若い人々と心身のトラウマを癒しを行っていきます。同時に、生存そのものに直結する安全な水の供給も行いたいのです。どうか、少しでも彼らのためにお気持ちを、ご協力をぜひとも、ぜひともよろしくお願いいたします。
<遠藤喨及による追記>
「他者のために涙する人の笑顔って、きっとステキだと思う」、、、アハメッドさんも、きっとそんな人でしょう。(残念なことに、今回はガザ入域ができなかったので、電話で話しているだけですが)
もしお気持ちが動かれた方がいらして、ご一報頂けたら大変たいへん嬉しいです。
あるいは、NPOアースキャラバンの口座への直接のご寄付でも、大変ありがたく、、、。http://earthcaravan.jp/support_01.php (ガザの浄水プロジェクトとわかるようにして頂けると尚ありがたいです)
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