まさか2日目に、こんなに驚きの一幕が用意されているとは思わなかった。
UNIは、和田寺という仏教のお寺が運営している。しかし、キリスト教の援助団体のように、援助を通して伝道するという発想は皆無である。
これはUNIの理念というよりも、そもそも大乗仏教というものが、そんなゆるいものだからである。
これがどこから来るのかというと、キリスト教と大乗仏教の時間の概念の違いではないか、と思う。キリスト教神学には最後の審判というものがあり、この時までにキリスト教に改宗していなければ「地獄に堕ちてしまう〜」ということになっている。(意外に思われるかも知れないがホント)
だから、「キリスト教でない人たちは地獄に堕ちてしまう。可哀想だから、何がなんでも伝道しなきゃ〜」と、思いやりの深い人ほど、焦る気持になるだろう。
しかし仏教では、「生まれ変わり死に変わりにながら、いつかは仏縁に恵まれてお浄土に救われるチャンスもある」というわけ。だから焦って伝道しなくても、“まあ今回の人生ではダメでも、またいつかの人生でご縁があった時にね。では、また〜。(バックには、尾崎きよひこの”また会う日まで”が流れている←古い!)”という風に、あっさりと見送ることができる。
というのは仏教的な感覚では、永遠の先と思えるような遠い未来であっても、それは”今ここ”に内包されている。だから、「あの人だって、この先、何百回か生まれ変わったら救われるんだから、まあいいか。それもまた今だし」というふうになるのである。(これは理屈でなく、感覚の問題である)
もっとも自分に対しては、「今回の人生で修行して目覚めなければ、いつまた人間に生まれて修行するチャンスがあるかはわからないぞ!」と厳しく迫る。人にはゆるく、自分や弟子には厳しいのが仏教である。
さて、前置きが長くなってしまった。2日目。ラジョー氏に「よかったら、タオサンガセンターの朝のお祈りにイキマしょう。終わった後で来てもいいけど」と言われた。それで出かけて行ったら、すでに学生たちなど、人も集まっていた。
<写真/”ちゃんと皆さん布施していますよ”と、見せてくれた。ラジョーさんは面白い。>
てっきり僕は、ラカイン仏教式の礼拝でもするのかと思っていた。しかし、いつの間にかラジョー氏は、念仏のお勤めテキストをみんなに配り、ナンとみんなで、念仏唱和が始まったのである。これには心底びっくりしたぞ。
あとで聞いたら、毎週金曜日はタオサンガセンターの念仏だという。そうか、お互い何ひとつ話さなかったのに、ラジョーさんは、ここを本当のタオサンガセンターにしようと努力しているんだ。
さらに僕を感激させたのは、ラジョーさんが、みんなの利他の心を育てようとしているように僕には感じられたことだった。
これまでラジョーさんと話合って来たことは、すべてラカインユニのプロジェクトに関することのみである。サンガのことなど話し合ったことはなかった。
なのに彼はサンガの本質を理解しているように思える。これは本当に嬉しい驚きだった〜!。まるで、前世からの友を発見したような気持である。
UNIの目的をみんなに話して欲しいと言われて話した。学生さんが中心だから、今日は英語。
以下は僕が話したこと。「 一体、われわれUNIは、バングラデッシュで何をやろうとしているのか?」
「仏教徒ラカイン人は、バングラデッシュでは少数です。少数ということは社会的に弱者であるということです。でもこのままで良いのでしょうか? 少数民族であっても強くなる方法はないのでしょうか?
UNIはその方法が2つあると思っています。
まず、ラカイン人がお互いの未来を思いやり、団結するためのネットワークを造ることです。たとえば2万人いるラカイン人すべてでネットワークをつくり、誰がどんなビジネスをしているのかをリストアップする。
そして、買い物はラカインから、仕事はラカインから、という風にお互いの経済ネットワークを作ることです。仕事を探しているラカイン人は、ビジネスをしているラカイン人が雇えます。団結することで強くなることができるのです。
もうーつは、教育の充実です。もしすべてのラカイン人が収入の一部を定期的に布施して、これを子供たちの教育の充実や、優秀な子供が高等教育を受けるための援助に回せば、ラカイン人ははるかに社会的に向上していきます。
そして、貧しくても優秀な学生が、援助を受けることで大学を卒業することができるようにする。そしてその学生が働くようになったら、今度は同じように収入の一部を布施して、他の学生の援助に回るようにする。
UNIは、こんなシステムを創りたい。そしてそのための受け皿として活動するため、タオサンガセンターができたのです。
ラカインの明るい未来は、お互いがみんなのことを考えることで開けて来る。UNIはそう信じているのです。」ちょっと疲れたけど、夢遊状態で咳しながら、がんばって話した。
午後は、結婚式に参加。
<花嫁さん>
2−3時間はいたかなー。ラカイン人の結婚式は一日がかりである。
<何やらいろいろと質問攻めに遇っているまゆさん。左の男性は、「僕はラカインの医者です」と自己紹介していた>
<うぬ、これは新手のピンポンパン体操か?>
その後は、UNIで修復している仏舎利塔の視察。明日の儀式のために、多くの人が働いていた。皆ニコニコと嬉しそうに挨拶してくれる。
<写真/ラジョーさんが雇って、仏舎利塔の世話をしている人。笑顔がすてきである>
僕はと言えば、まだ、頭がぼーっとしている。やがて2日目も暮れようとしていた。夕日が沈むのを、修復してきれいになった、仏舎利塔の丘の上から眺める。
<修復して、見違えるようにきれいになった仏舎利塔群>
<仏舎利塔はラカインの信仰の象徴だから、ラカインのみんなが気にしている。写真は、仏舎利塔の念仏道場の前で>
[…] バングラデッシュ、二日目の驚き […]